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対話を通じ主体的な行動を引き出す「1on1ミーティング」のすすめ

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みなさんは、上司または部下と良好な関係性を築けていますか?また、自分自身のことを振り返る機会を作っているでしょうか?

新型コロナの感染拡大を機に進んだ在宅勤務制度の導入。私の勤務する組織でも緊急事態宣言を機に、在宅勤務が始まりました。当時4月ということで、異動社員がいたり新しく上司が変わったりと、日々目まぐるしく状況が変化。そんな時ふと「最近、仕事が前に進んでいるのかいないのか…環境はこんなにも変化しているのに、私は何一つ前進していないのでは?」と急に焦りを感じるようになりました。
後から振り返ると、職場のメンバーと顔を合わせての会話が減少したこと、そして新しい上司に自己開示する機会が無かったことも焦りの要因でした。

環境変化の有無に関わらず、対話を通して定期的に振り返る機会を設けることが、安心感を持ってのびのびと働ける鍵になるのでは?と思います。
そこで今回は、上司と部下が1対1で定期的に対話をする「1on1ミーティング」について、その目的や背景、実施のメリットをご紹介したいと思います。

1on1ミーティングとは?

「1on1ミーティング」は今や企業規模問わず様々な企業で取り入れられているため、「私の会社でも実施している」という方も多いのではないでしょうか。日本では、2012年にヤフー株式会社が初めて制度として導入。1on1ミーティングの定義は、「上司と部下が1対1で定期的に実施する対話」とされていますが、日常的によくある業務の進捗共有や仕事の相談、人事評価面談とは大きく異なります。どのように異なるかというと、「対象・目的・実施方法」に特徴があります。

対象:誰のために実施するのか

上司のための時間」ではなく「部下のための時間」であることが1on1ミーティングの第一条件です。例えば、業務の進捗共有や成果の報告は、業務の監督者である上司のために取っている時間です。一方で、1on1ミーティングは「部下の成長支援のための時間」と位置づけられており、コミュニケーションの主体者は「部下」になります。

目的:何のために実施するのか

「部下の成長支援」が1on1ミーティングの主な目的です。
みなさんは「7:2:1の法則」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?とあるアメリカの研究によると、人は7割を「仕事上の経験」から学習し、2割を「他者からのフィードバック」1割を「研修などのトレーニング」から学ぶと言われています。1on1ミーティングでは、「仕事上の経験からどのような事を学び、次に生かしていくか」を明確にし、次のアクションプランを決めることで、部下の成長を促します。

実施方法:どのように実施するのか

1on1ミーティングの頻度と実施場所について

1on1ミーティングの頻度ですが、半年に1回などの評価面談とは異なり、「週に1回」「隔週」「月に1回」などと細かく接点を取るのが特徴です。また、実施場所については、部下の仕事環境を把握するためにオフィス内の会議室を利用するケースが多いようです。場合によってはリラックスした状態で会話ができるように、カフェで実施するのもおすすめです。中には、散歩をしながら1on1ミーティングをする人もいるようですが、お互いが話しやすい環境であれば場所は問わずとも良いのでは、と思います。

1on1ミーティングの対話のポイント

「毎週、1on1ミーティングをやっていたらネタが尽きてしまうのではないか?」という心配もあるかもしれませんが、話す内容をあらかじめ決めていなくても問題ありません。その時々で「何について話したいか?」を部下に問いかけてみてください。話したいテーマが無ければ、「最近どう?」という言葉でちょっとした雑談やラポールの時間を作ることで打ち解けた雰囲気が生まれます。「実は話したかったけど話せなかった」話を引き出せることでしょう。
また、部下とのコミュニケーションのポイントとして、

  • まず部下に十分に話してもらうこと
  • 部下の言葉を先取りしたり、否定したりしないこと
  • 部下の主体的な姿勢を引き出すために、次のアクションプランに対して上司が指示を出してはならないこと

が重要です。原則として部下の話を「否定せずに傾聴すること」に重きが置かれています。上記ポイントは、前出のヤフー株式会社が提唱している「ヤフー式1on1ミーティング」で取り上げられています。
1on1ミーティングの中で、つい部下を「評価」や「指導」していませんか?改めて目的や誰のための時間なのかを考えると、対話の姿勢が変わりそうですよね。

1on1ミーティングの効果

「部下の成長支援」を目的とした1on1ミーティングですが、得られる効果は部下の成長以外にも多岐に渡ります。

コミュニケーションのきっかけ作りに

一昔前は、仕事終わりの「飲みニケーション」が上司と部下の雑談のきっかけになっていたかもしれません。しかし時代の変化や世代間の価値観のギャップから「飲みニケーション」による関係構築は難しくなっているように思います。(もはや「飲みニケーション」は死語に近いかもしれませんね。)また、部下全員が話しやすいタイプとは限らず、相性の合わない部下を抱えているケースもあるでしょう。そんな時に、「1on1ミーティング」を制度として活用することが、コミュニケーションのきっかけ作りにつながります。

仕事以外の状況を知ることができる

上司が感じるメリットとして、「仕事以外の状況を知ることができる」ことが挙げられます。個人情報やプライバシーの問題で、なかなかプライベートなことを聞き出すのは難しいかもしれません。しかし、定期的な1on1ミーティングを実施することで徐々に信頼関係を構築。部下の方から、趣味や家庭環境、プライベートでの悩みを開示してくれるケースもあります。仕事とプライベートは密接に関わっています。部下の仕事が上手く行っていない時にプライベート状況を理解しておくことで、部下のケアにも繋がります。

安心感を持って働ける

また、部下が得られるメリットとしては、「定期的に傾聴し、成長を支援してくれる存在がいること」が組織で働く上での心理的安全性に繋がります。私も部下の立場で定期的に1on1ミーティングに参加していますが、間違いなく上司との信頼関係構築につながると実感しています。「自分にとって働きやすい環境」を自ら作っていくためには「自己開示すること」も有効かと思います。

1on1ミーティングおすすめ書籍

最後に、「これから1on1ミーティングを試してみたい」と思っている方や「改めて1on1ミーティングについて勉強し直したい」と言う方におすすめ書籍をご紹介したいと思います。

ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法

1on1ミーティングは、この「1on1」という言葉だけが先行し、実際は形骸化しているケースも少なくないのでは?と思います。それこそ、部下の話を傾聴できず、つい先走って「指導」してしまったり、なんとなく時間をとった上に終始雑談や仕事の愚痴で終わってしまうケースもあるのではないでしょうか?

ヤフーの1on1では、目的や概念のみならず、部下に対する言葉の掛け方についても分かりやすく記されており、「1on1ミーティングを導入したら、コミュニケーション技法についても学ぶ必要がある!」と、意欲を掻き立たせる内容になっています。新たに導入検討している方にも、今一度見直したい方にも非常に参考になる基礎的な書籍ですので、ぜひ読んでみていただければと思います。

 

Mayo

新卒で介護系事業会社で広告の営業活動を経験した後、大手人材紹介会社に転職。キャリアアドバイザーとして20代~30代を対象とした転職支援に従事。副業でWEBラ...

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