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変化の激しい時代を軽やかに生きるために 「ポータブルスキル」を磨こう

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近年、業界職種を超えた転職において「ポータブルスキル」という概念に注目が集まっています。人事の皆さんであれば、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?自社の採用活動や教育制度構築においても、また自分自身のキャリア形成においても役立つ「ポータブルスキル」。今回はこの「ポータブルスキル」についてご紹介していきます。

ポータブルスキルとは?

「ポータブルスキル(portable skill)」とはその名の通り、業界・職種が変わっても「持ち運びできるスキル」と定義されています。語学力やプログラミングスキル、簿記などの知識レベルが資格制度によって証明されている「テクニカルスキル」とは異なり、下記のようなビジネス上で汎用性の高いスキルの事を指し、構成要素として「仕事の仕方」と「人との関わり方」の2つがあります。

「仕事の仕方」において必要なスキル

  • 課題を明らかにする力(現状の把握や課題の設定方法)
  • 計画を立てる力(計画の立て方)
  • 実行する力(実際の課題遂行、状況への対応)

「人との関わり方」において必要なスキル

  • 上司、経営層との社内対応力
  • 顧客や社外関係者との社外対応力
  • 部下のマネジメント力

出典:ポータブルスキル活用研修

「課題を明らかにし打ち手を考える力」や、「良好な人間関係を構築する力」は職場が変わっても必要不可欠な能力ですよね。ポータブルスキルを鍛えることで業界職種問わずに活躍の幅が広がるため、採用においては異業種からの転職希望者であっても「ポータブルスキル」の高い人材が入社することも少なくありません。

なぜ今ポータブルスキルが必要なのか?

「変化適応力」が求められるようになったから

ポータブルスキルが着目されるようになったのは、時代の急速な変化によりこれまで以上に「変化への適応力」が必要になったからと言えます。
近年はIT技術やテクノロジーの進化、世界各地で起こる政治的変化や数々の災害、また直近では新型コロナウイルスの感染拡大等により、先行きが不透明で予測不可能な時代(=VUCA時代)へと突入。
※VUCA時代とは:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字をとった造語で、社会情勢の複雑さが増し将来予測が困難な時代のことを指します。

日本では、大手企業が早期退職希望者を募ったり、大々的に副業を解禁するようになったりと、所属組織に依存するのではなく「個人のスキル向上が必要」という考え方にシフトしつつあります。こうした変化により、今後どのような環境変化があっても対応できる「ポータブルスキル」を身につける重要性が高まっています

ポータブルスキルを身につけて得られるメリットとは

ポータブルスキルを磨くことは、社内評価向上だけではなく転職や副業においても有効です。例えば、ポータブルスキルの一つである「社内対応力」。転職でこれまでと異なる業務に携わることになっても、周囲と協働する力や人を巻き込む力は様々な場面で求められます。専門性や業界知識を身につけることは後からでも間に合いますが、人との関わり方や仕事の仕方は、日々の積み重ねがあってこそ即時にアウトプットできるものです。
転職後の活躍を見据えた時に、ポータブルスキルを発揮することがいち早く組織へ適応することにも役立つはずです。

人事としてポータブルスキルをどう活用する?

さて、ポータブルスキルの重要性が理解できたところで人事としてポータブルスキルをどう活用していけば良いか、考えてみました。

採用面接でポータブルスキルを見極める

従来の中途採用においては、専門性や業界知識さえあれば即戦力として活躍を見込めたかもしれませんが、今後はますます、「専門性に加え、高いポータブルスキルを有するか?」ということも「入社後活躍」を見極める基準になるのではないかと思います。
そのため、面接の中で下記のようなポータブルスキルを見極める具体的な質問をしてみることもおすすめです。

・どのような課題がありそれに対しどのような工夫改善をしてきたか
・業務上の成功体験(失敗体験)とそれを成し得た(乗り越えた)理由について
・上司や同僚と円滑にコミュニケーションをとるために心掛けていることは何か
・チームで成果をあげた経験とその時の役割について

ポータブルスキルの「仕事の仕方」に分類される「課題を明らかにする力」や「計画力」「実行力」の有無を見極めることができます。また、チームや社内での役割に関するエピソードについて問いかけることで、社内コミュニケーションの再現性を見出すこともできます。

ポータブルスキル研修の実施や人事評価制度の参考に

また、ポータブルスキルを活用した研修を社員向けに実施することや、人事評価制度の指標に取り入れることも良いでしょう。最近では、若手社員向けの「ポータブルスキル研修」をプログラム化し販売している研修企業もよく見かけます。外部に委託することで自分自身もスキルについて学びつつ社員のモチベーション喚起にも繋がると思います。

最後に

今回はポータブルスキルについて、その重要性や活用法を考えてみました。私自身も社内研修の一環で、ポータブルスキルについて学んだ経験があります。学ぶ前は、日々の業務を「流れ作業」のように感じてしまったり、チーム内で「どのような役割を果たしていきたいか」ということについて全く考えが及ばない状態でした。しかし、ポータブルスキルの詳細を学んだことで、今の自分の弱みは「課題を明らかにする力」なのか、はたまた「計画力、実行力」なのか考えるようになったり、また、自分の発言や行動が他の人にどのように影響するのかを考えるようになり、より主体的に業務に取り組めるようになりました。社内での仕事との向き合い方や捉え方が変化するだけでなく、転職や副業といった別の機会にも必ず役立つスキルと言えます。
ぜひ皆さんもポータブルスキルについて学び、実践してみてはいかがでしょうか?

Mayo

新卒で介護系事業会社で広告の営業活動を経験した後、大手人材紹介会社に転職。キャリアアドバイザーとして20代~30代を対象とした転職支援に従事。副業でWEBラ...

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