社員の「パラレルキャリア」が企業にもたらすメリットとデメリットとは
皆さんは、「パラレルキャリア」という言葉を耳にしたことはありますか?
近年、雇用形態や働き方の多様化にともない、本業とは別に好きな分野で第二のキャリアを築く、パラレルキャリアという働き方が注目されています。
もしかすると、従業員から「副業をしたい・パラレルワークをしたい」と、相談を受けたことがある人事の方もいるかもしれません。
「パラレルキャリア」というと、個人としての働き方なかり、焦点があたりがちですが、今回は企業に「パラレルキャリア」はどんなものなのかを、ご紹介していきたいと思います。
パラレルキャリアとは?副業との違い
ご存知の方も多いと思いますが、パラレルキャリアとは、「収入の基盤となる本業を持ちながら、自分の好きな分野で第二のキャリアを築くこと」を言います。
例えば、本業で事務職をしながら週末に子どものフットサルのコーチをしたり、本業でウェブエンジニアをしながら空いた時間でプロボノワーカーとしてNPOへの支援をしたり。
※プロボノとは、社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや専門知識を活かしたボランティア活動をすることを言います。
また、「パラレルキャリア」とよく混同されるのが「副業」です。
似ているように感じますが、それぞれ目的が違います。
副業は、金銭的な報酬を目的とする場合が多いですが、パラレルキャリアは社会貢献や自身のスキルアップ、夢の実現などを目的としています。
社員の「パラレルキャリア」が企業にもたらす3つのメリット
では、人事のみなさんは、従業員から「パラレルワークをしたい」と相談を受けた場合、何と言ってあげますか?
人事の気持ちとしては「従業員のチャレンジを応援したい気持ちもありつつ、本業の手は抜かないでほしい」「少し複雑…」というのが本音なのではないでしょうか。
企業にとってもメリットが無ければ、心から応援することはなかなか難しいと思います。
それでは、従業員がパラレルキャリアを実践することで、企業にどのようなメリットがあるのかを一緒に考えてみましょう。
1.従業員のスキルアップから企業の成長が見込める
従業員がパラレルキャリアを実践することにより、自社で身に付くスキルや経験以外の能力を社外で培い、自社にフィードバックしてくれることが期待できます。
社外で得たスキルや経験を社員同士で共有することで、企業は新たなアイデアやノウハウを得られ、さらなる成長が見込めるでしょう。
また、従業員の本業以外での繋がりから、企業にとっても新たな人脈づくりや新たな仕事が生まれる可能性もあります。
2.従業員の「自己実現の欲求」を満たすことで、パフォーマンスが上がる
自己実現の欲求とは、心理学者のマズローが提唱した「人間の5段階欲求」のうちの最上位の欲求のことを言います。
自己実現の欲求は「自分の能力を最大限発揮して、夢を叶えたい、理想に近づきたいという欲求」で、「自分らしく生きたい」ということにもつながります。
従業員がパラレルワークで「好きなこと」に思い切り取り組むことは、自己実現の欲求を満たしてくれます。
好きなことに打ち込むことで、ONとOFFのメリハリがつき、本業へのコミット力やパフォーマンスの向上が期待できるのではないでしょうか。
3.「多様な働き方ができる企業」というブランディングにより、企業イメージが向上する
従業員の「パラレルキャリア」を応援することは、「働き方の多様性」を推奨する企業という印象を与え、企業のブランディングや企業イメージの向上につながるのではないでしょうか。
また、パラレルキャリアは自分の能力やスキルを社会に向けて還元していく活動なので、企業にとって一つの社会貢献活動ととらえることができます。
「社員のひとりひとりの人生、幸せを応援している」という在職社員へのメッセージ性もある上、求人の際にも「いい会社だな」と思ってもらえそうです。
パラレルキャリアのデメリット
では次に、「パラレルキャリア」を推奨するうえで、企業側にとってデメリットと考えられることをご紹介していきます。
従業員のパラレルキャリアは、本業に支障をきたす可能性が少なからずあります。
情報セキュリティへの不安
先ほど、従業員のパラレルキャリアにより、社外で得た知識やスキルを自社にフィードバックし、企業の成長が見込めるというメリットをご紹介しました。
しかし、それは逆に自社で得たノウハウを社外に持ち出される可能性もあるということです。
悪気はなくても、つい話しをしてしまったりなど、出していい情報と、いけない情報の境界線が明確でないため、本人の良心に依存せざるを得ないという状況があります。
そこで、人事としてはそのような事態を防ぐために対策が必要ですね。
では、どんな対策は必要かを、ここで3つ紹介していきたいと思います。
パラレルキャリアをする従業員と事前に確認しておくこと3つ
・パラレルワークの活動内容の確認
・同業種でのパラレルワークの禁止
・事前にどのような仕事をするのかの確認と申請
業務時間以外に行う個人としての活動なので、どこまで制限はできないものの、としてはパラレルワークの状況を把握して、本業に支障をきたすことなくしたいものですね。
従業員のオーバーワークによる体調不良
パラレルワークの量や頻度によっては、従業員が十分な休息が取れずにオーバーワークとなり、身体をこわしてしまう危険性があります。
そうすると、本業のパフォーマンスが下がったり、体調を崩して休んでしまうなどの事態が起こり得ます。
従業員がパラレルキャリアをする際は、企業側もその量や頻度を把握し、従業員の健康管理に気を配りましょう。
また、オーバーワークが見受けられた際は、面談などを実施し、パラレルワークの量や頻度を調整するように働きかける必要があります。
最後に
以上のように、従業員のパラレルキャリアは、デメリットを理解して、対策をとれば、企業にとってもメリットが多いものだと考えられます。
パラレルキャリアは、従業員のキャリアの充実や理想の生き方を叶えることにつながるので、「この会社はいい会社だな」と、モチベーションも高まるので、社員が会社への好感度も高まり、新しい働き方改革にもつながります。
また、外向けには、「社員のひとりひとりの個性や生き方を大切にする会社」として、ブランディングやイメージアップにもつながるでしょう。
とはいえ、まだパラレルキャリアや副業を禁止している会社が多いのが実情です。
価値観も多様化し、働き方も変化している今こそ、「従業員のパラレルキャリア」への対応方法を検討したり、パラレルキャリア推奨の観点から採用や社員育成の新しい仕組みを考えてみるのもいいのではないでしょうか。
人材会社にて6年間、【人材コーディネーター】として勤務。求職者と仕事のマッチングだけでなく、もっと一人一人に合ったキャリアサポートをしたいと考え、【国家資格キャリアコンサルタント】を取得。育休中にオンラインキャリアサポートの副業に挑戦し、パラレルキャリアを実践中。