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ジョブ型雇用ってどんな制度?注目される背景、メリット・デメリットについて

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最近「ジョブ型雇用」という言葉をよく耳にするようになりました。年功序列や終身雇用といった日本型の雇用システムが見直される中、ジョブ型雇用の導入には賛否両論あるようですね。今回は、ジョブ型雇用と従来の雇用制度の違いについて、また導入によって企業側・従業員側にどのようなメリット・デメリットがあるのか紹介したいと思います。

ジョブ型雇用って何?従来の雇用制度との違いは?

ジョブ型雇用とは、会社側があらかじめ任せたい仕事内容や求めるスキルを明確にした上で採用する制度のこと。ジョブディスクリプション(職務記述書)という書面に業務内容や業務範囲、必要な能力・スキルを記載し、合致する人材を採用します。
欧米ではジョブ型雇用が一般的ですが、日本では勤務地や仕事内容、職務範囲を限定せず、まず会社のメンバーとして採用してから業務を割り当てる「メンバーシップ型雇用」が主流です。皆さんも経験があるかもしれませんが、従業員の配置転換や全国転勤はメンバーシップ型雇用の特徴です。

ジョブ型雇用に注目が集まっている背景

なぜ今ジョブ型雇用に注目が集まっているのか、そこにはいくつかの背景があるようです。

①労働人口減少の中で国際競争力を上げるため

日本では少子高齢化に伴い労働人口が減少しています。また、2020年スイスのビジネススクールIMDが出した「2020年世界競争力ランキング」で日本は過去最低の34位まで下落しました。その要因として、労働生産性の低さが挙げられています。今後、人口が減少する中で、一定の国際競争力も求められるとなると、企業は生産性向上やより高い専門性を持った即戦力の採用に力を入れることになるでしょう。

②働き方の価値観が多様化しているから

これまでは年功序列や終身雇用が一般的で、退職までの経済的な安定が約束される一方、従業員は急な配置転換や全国転勤に反発することができませんでした。しかし、近年は働き方に関する価値観が多様化。育児や介護と両立できる働き方を希望する声や、場所を問わず働きたいというニーズも顕在化しています。企業はこうしたニーズがある中で従業員を一律で評価することが難しいため、業務内容や範囲を限定して評価できるジョブ型雇用は相性が良いとされているのです。

③コロナ禍によるテレワークの推進

ジョブ型雇用への注目が集まった大きなきっかけの一つは、やはりコロナ禍によるテレワークの推進でしょう。先日、記事【テレワークでの評価、どうする? する側、される側、それぞれの課題】でも紹介した通り、テレワークにより、労働時間やオフラインだからこそ見える働きぶりを基準とした評価が難しくなっている背景があります。「定性的な評価ではなく、定量的な評価」にスポットライトが当たる今、成果主義に近しいジョブ型雇用制に注目が集まるのも必然と言えます。

ジョブ型雇用のメリット・デメリットについて

さて、ここでジョブ型雇用の導入によって従業員側、そして企業側それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるのかを見ていきたいと思います。

従業員側のメリット・デメリットについて

規定の仕事内容・求められるスキルを事前に認識することで、従業員側では下記のようなメリット・デメリットがあげられます。

<メリット>
①専門性を極めることができる。
②仕事内容や成果で給与が決まるため、能力次第では昇給・昇進が見込める。
③雇用の流動性が高く、今の仕事に満足できなかったら転職や副業も可能。

<デメリット>
①配置転換をしたくてもできない。
②能力が上がらなければ給与も上がらないため、常にスキルを磨き続けるゆえのプレッシャーがある。
③景気の側面が悪化すると、解雇される可能性もある。

企業側のメリット・デメリットについて

一方で、企業側としてジョブ型雇用を導入することのメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?

<メリット>
①職能にマッチする人材を採用することができる。
②生産性の向上が見込める。
③外国人材を受け入れやすい。

<デメリット>
①転勤・異動などの配置転換の柔軟性が低い。
②常に転職されるリスクがある。
などが挙げられます。

ジョブ型雇用導入検討に対して、どのような姿勢が重要か?

ジョブ型雇用導入にあたっては良い面も懸念される面もあり、そもそも「自社にフィットするか?」が最大の難点になりそうです。特に従業員規模の大きい大手企業では、業務を分業化しているところが多いため、ジョブ型雇用を導入が検討しやすいですが、中小企業やスタートアップ企業では業務を兼任することが多々あり、ジョブ型雇用に振り切って人材を採用することは難しいかもしれません。しかし、ジョブ型雇用により専門性の高い人材が入社することで事業が急速に成長するというメリットもあります。少ない人員で成長を期待したい中小企業やスタートアップで、「ジョブ型雇用を導入しない方が良い」とは一概には言えません。
そこで、例えば転職市場で出会えないような専門性を持った人材を採用したい場合に、一部ジョブ型雇用の導入を検討し、新卒やその他職種においてはメンバーシップ型雇用を取り入れるなど、会社の規模や事業フェーズによって柔軟に取り入れていくことが大事なのではないでしょうか?時代の変化に応じて様々な制度やツールがでてくる中で、新しい制度を取り入れてみたり既存の制度との調整やバランスを取っていくことが、今の時代を渡り歩く鍵になるかもしれませんね。

 

 

Mayo

新卒で介護系事業会社で広告の営業活動を経験した後、大手人材紹介会社に転職。キャリアアドバイザーとして20代~30代を対象とした転職支援に従事。副業でWEBラ...

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