今、復職制度が注目されている⁈出戻り社員を再雇用するメリットとデメリットを解説!
皆さんの会社には、退職した従業員を再雇用する、復職制度はありますか?
復職制度は、他にも「再雇用制度、カムバック制度、ジョブ・リターン制度、アルムナイ制度」など、様々な呼ばれ方をします。
復職制度が注目され始めた背景には、企業の人材不足という課題があげられます。
少子高齢化により働き手がどんどん減る中、企業による優秀な人材の獲得競争が加速しています。
そこで、今注目されているのが、復職制度です。実際に最近、各社で出戻り社員が増えてきているようです。
2018年に実施された『人事のミカタ』アンケート調査によると、「一度退職した社員を再雇用したことがあるか」という問いに対して、72%の企業が「再雇用したことがある」と回答しました。
採用の一つの手法として、復職制度は効果的と言えるのでしょうか?
今回は、復職制度のメリットとデメリット、再雇用する際の注意点をご紹介します。
復職制度のメリット
退職した従業員を再雇用することは、企業にとってどのようなメリットが考えられるでしょうか?
1.採用コストを抑えられる
企業で中途社員を1名採用するのにも、莫大な費用がかかります。
2018年度の中途採用にかかった平均採用コストは、1人あたり84.8万円というデータがでています。(参考:マイナビ 中途採用状況調査)
しかし、人事や既存社員が退職社員と退職後もいい関係を保ち採用に繋がった場合、広告費や転職エージェント、派遣会社などに支払う採用コストがかかりません。
退職社員を再雇用することは、採用コストが抑えられると考えられます。
2.即戦力となる
企業にとってすぐに成果や結果が欲しい時、まっさらな新人よりも、業務知識がある社員の方が、早い成果を期待できます。
どんなに優秀な人材でも、新規で入社した場合、研修をし業務を覚えてもらい、成果を出すまでに数カ月はかかります。その点、退職社員は経験したことのある仕事内容のため、以前との変更点のみ教えればすぐに成果を出せると考えられます。
実際に、企業が出戻り社員を再雇用した理由の1位は、「即戦力を求めていたから」というアンケート結果も出ています。(参考:人事のミカタ 出戻り社員(再雇用)について)
3.マネジメントしやすい
過去の実績や人柄、強み弱みなどを知ったうえで一緒に仕事をするので、上司にとってマネジメントしやすいと考えられます。
また、業務知識や社内の雰囲気も理解しているためミスマッチが起こりにくいことも利点です。
4.組織の成長に繋がる
他社で得た知識やスキルを持ち帰るため、新しいアイディアや洗練されたスキルにより、さらなる組織の成長が見込めます。
他社で培ったスキルを自社内に取り入れることによって、新たなイノベーションが生まれ、事業の可能性が広がります。
5.自社への愛着が強く、仕事に対してのモチベーションが高い
一度、会社を離れて他社を経験したり、家庭に入ったりした社員が、「戻ってきたい」と思うということは、会社に対して愛着があるからだと考えられます。
隣の芝生は青く見えて転職した社員も、他社を経験して初めて自社の良い面を感じられたのでしょう。
そのような社員は、退職前よりもモチベーション高く勤務し、周囲の社員へもいい影響を与えると考えられます。
私は採用を担当しているので、これらのメリットは、退職した派遣従業員の方が再入社していただいた時に、実際に私が感じたことです。
再入社したこの方は、以前の職場にすぐに馴染み、業務上も即戦力となり、数か月後にチームリーダーとなり、企業にとっていい影響をもたらしてくれました。
また、正社員が正社員として、派遣社員が派遣社員として、同じ雇用形態で再入社するケースもありますが、例えば家庭の事情で辞めた正社員が、シフトの融通が効く派遣社員やアルバイトとして再入社するというケースもあります。
雇用形態や働き方を幅広く設け、従業員に周知することで、やむを得ず退職した従業員が復職の相談をしやすくなるかもしれません。
復職制度のデメリット
退職者の再雇用は、企業にとってメリットが多いように感じますが、デメリットはあるのでしょうか?
まず考えられるデメリットは、復職制度を利用することで「出戻りしやすい雰囲気」があることだと考えられます。これはメリットでもありますが、裏を返すと退職しやすい空気を作ることに繋がります。
戻れる場所があるという安心感から、転職に踏み切る若手社員が増える懸念があります。
二つ目に考えられるデメリットは、出戻り社員の態度によっては社内で人間関係のトラブルに発展する可能性がある点です。
退職理由にもよりますが、退職者の出戻りを快く思わない既存社員は一定数いると考えられます。
他の従業員からの反発なども想定されるかもしれません。
復職制度において人事が気をつけたいこと
では、人事として、復職制度はどんな点に気をつけた方がいいのでしょうか?
軽はずみな転職を防ぐために復職条件を設ける
デメリットに書いたように、復職制度は転職の後押しをすることに繋がる可能性があります。
そのため、企業は「戻りたい人は誰でも受け入れる」というスタンスではなく、「復職できる条件」を設けることで、軽はずみな転職を防ぐことに繋がると考えられます。
また、再雇用は元上司や部下など、個人的な繋がりだけで自社へ引き戻してしまうケースが多いので、採用ルールについても明確にしておくことも重要です。
出戻り社員のマインドセットと既存社員へのフォロー
出戻り社員を再雇用する際、事前に面談を実施し、「従業員の中には再雇用を快く思わない従業員がいるかもしれない」ということを、きちんと伝える必要があります。
それでも戻りたいと思うのか、改めて意思確認をしたうえで復職に踏み切ったほうが、出戻り社員と既存社員のトラブルを避けられるでしょう。
また、既存社員への対応として、混乱や反発を防ぐために面談を実施したり、採用段階で受け入れについてヒアリングをするなど、不信感を抱かせないよう既存社員とのコミュニケーションを密に取ることも重要だと考えられます。
退職した後も良い関係性でいられる雰囲気を作る
復職制度で退職した社員が戻る可能性があるのですから、従業員が辞めるときも、無理な引き止めはNGですね。人事からの無理な引き止めは、従業員の心が離れる要因になります。
こちらの気持ちや要望を伝えると共に、復職制度について説明し、良い関係性のまま送り出すことができれば、従業員にとって「戻ってきたい会社」になるかもしれません。
人事側も、「退職したらもう知らない」という態度ではなく、「さらに成長できるように転職先でも頑張ってね」というスタンスで退職者に向き合えると、心の繋がりが生まれ、退職後も良い関係を続けていける可能性があります。
最後に
ここまで、復職制度について良い面と気を付けたほうがいい所を考えてきましたが、いかがでしたでしょうか?
多様性や働く個人の主体性に重きを置く今の風潮を考えると、人材の流動化は自然なことであり、今後さらに広がっていくのではないかと思います。
採用難の今、退職者を再雇用することは、メリットが多いように感じます。
実際に、退職者と企業をつなぐツールを設けている企業もあり、例えば退職者向けの広報誌や専用サイトなどで退職者と繋がりを持つ企業も増えている状況です。
「退職」という出来事で線引きするのではなく、人と人との繋がりを大事にしていくことが、人材の確保と長い目で見たときに、企業の成長に繋がるかもしれません。
人材会社にて6年間、【人材コーディネーター】として勤務。求職者と仕事のマッチングだけでなく、もっと一人一人に合ったキャリアサポートをしたいと考え、【国家資格キャリアコンサルタント】を取得。育休中にオンラインキャリアサポートの副業に挑戦し、パラレルキャリアを実践中。