若手社員の離職理由から考える、人事や管理職ができる対策とは?
みなさんは、「七五三現象」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは、新規で就職してから3年以内の離職率を表した言葉で、以前は「中卒就業者は7割、高卒就業者は5割、大卒就業者は3割」と言われていました。
現在はどのような数字になっているのでしょうか。
2020年10月に発表された厚生労働省のデータによると、「中卒就業者は59.8%、高卒就職者は39.5%、大卒就職者は32.8% (2017年の3月の卒業者)」
中卒・高卒就業者の数字は改善していますが、大卒就業者は変わらず3割の早期離職者がいることがわかります。
せっかく内定をもらった会社を、すぐに辞めてしまう理由は何でしょうか?
今回は、「若手社員が定着しない」という問題を深掘りし、人事や管理職ができる対策をまとめました。
若手社員が早期離職する理由
若手社員が次々に辞めてしまう理由と傾向を、労働政策研究・研修機構(JILPT)が発表したアンケート調査をもとに見てみます。
「早期離職する若者たちは長く勤めてから辞めた若者たちより、男女ともに人間関係に悩み、仕事がうまくできず自信を失い、心身の健康を損ね、「やりたい仕事」とのギャップを感じて離職していく傾向がみられた」(出典:労働政策研究・研修機構「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ」)
まとめると、早期離職の理由は以下のような傾向が見られたようです。
・人間関係に悩みがあった
・仕事がうまくできずに自信を失った
・心身の健康を損ねた
・「やりたい仕事」とのギャップを感じた
一般的に離職理由について、「給与や待遇への不満」「会社の将来性への不安」などがあがることが多いですが、入社3年以内の早期離職においては「勤務条件の不満」よりも「仕事内容や人間関係への不満」が多いことがわかります。
人事や管理職が、若手社員定着のためにできること
では、それぞれの離職理由に対しての深掘りと、人事や管理職ができる対策を考えていきましょう。
人間関係に悩みがあった
職場における人間関係のストレスは、多くの社員が感じている悩みだと思います。
「上司の機嫌が悪くて気をつかう」「社内で自分だけ浮いている気がする」など、人間関係の悩みは仕事に対するモチベーションの低下につながります。
では、人間関係を理由にした離職を防ぐためにできることは何でしょうか?
この悩みは、一日二日で急に「人間関係に悩んでいるから退職したい」と気持ちが固まることは考えにくいです。
まず必要なのは、早い段階でその悩みに気づくこと。
そのために、入社後の定期的なフォロー面談が必要だと考えます。
面談で「人間関係で困っていることはないか、上司やメンバーとコミュニケーションが取れているか」をヒアリングすることにより、早めに対策を打つことができるのではないでしょうか。
ポイントのまとめと、打てる対策の例を下にあげます。
定期面談により、人間関係について相談できる場をつくる
【対策の例】
・若手社員向けの仕事の進め方・コミュニケーション研修
・上司のマネジメントスキル向上のための研修
・配置転換やチーム替え
仕事がうまくできずに自信を失った
この離職理由は、少し主観的な印象を受けました。
「うまくできない」というのは、どのような基準で判断しているのでしょうか。
会社が社員に求めている仕事内容や役割を、社員自身が正しく理解しているか。まずはその確認が必要だと思います。
もしかすると、周りと比べてできないと思い込んでいるだけで、会社が求める基準はクリアしている可能性もあります。
人事や管理職に必要なのは、社員一人一人に「会社があなたに何を求めているか」を明確にして丁寧に伝えることではないでしょうか。
また、自信をつけるためには、成功体験が必要です。
コーチングでも使われる方法ですが、目標を小さく細分化し、達成の機会を増やすことで社員のモチベーションを高めることができます。
そして、本人の感じている通り、社員のスキルが会社の求める基準に達していないこともありえます。その場合は、OJT(職場内訓練)やOFF-JT(職場外研修)などで、社員のスキルの底上げをサポートすることが必要となります。
・「会社があなたに何を求めているか」を明確にして丁寧に伝えること
・目標を小さくし、成功体験を積ませることで自信を取り戻してもらう
・OJTやOFF-JTによる、社員のスキルUPのサポート
心身の健康を損ねた
この離職理由については、起きた事象よりも、その背景に何があるのかが重要です。
長時間労働により体調を崩した場合は、労働時間の見直しが必要。人間関係に悩んだ末、心に不調をきたした場合は、組織運営や社内・チームの雰囲気の改善が必要になります。
このように、原因にアプローチすることが問題解決につながるはずです。
また、「遅刻や欠勤が増えた、顔色が悪い、笑顔が少ない、身だしなみに気をつかわなくなった」など、普段と違う様子がみられたら、早めに声がけや面談をするのも有効なのではないでしょうか。
・心身の健康を損ねた背景を丁寧にヒアリングし、原因にアプローチする
・社員に「普段と違う様子」が見られたら、早めに声がけや面談をする
「やりたい仕事」とのギャップを感じた
パーソル総合研究所の調査によると、入社後、なんらかのイメージのギャップ(リアリティ・ショック)を感じた新社会人は76.6%に及ぶそうです。
(出典:パーソル総合研究所「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」)
この数字から、期待に胸を膨らませて入社し、時が経つにつれて「思っていた仕事と違う」と感じる新社会人は多くいることがわかります。
人事や管理職ができる対策として、入社前と入社後のそれぞれのタイミングでの対策を考えていきます。
入社前にできる対策
まず、入社前にできる対策としては、仕事内容を正しく伝えることが必要です。
選考の段階で、仕事内容の良い面だけではなくマイナス面も包み隠さず伝えることが重要で、それにより、新入社員は過度な期待をすることなく、フラットな状態で仕事に向き合えるのではないでしょうか。
また、仕事内容を深く理解してもらうために、職場見学や先輩社員と直接話せる座談会、インターンシップなどもミスマッチを抑えるのに有効だと思います。
入社後にできる対策
では次に、入社後にできる対策を考えてみましょう。
もし、新入社員から「やりたい仕事とは違った」と相談を受けたら、どのように対応するのがいいのでしょうか?
新入社員が、「やりたい仕事」を求める気持ちもわかります。
しかし、組織で働くうえで、「やりたい仕事」以外の仕事をしないといけない場面はたくさんあると思います。
そんな時、まずは不満を受け止め、本人の言う「やりたい仕事」が何なのかヒアリングし、より具体的に言語化できるようにサポートします。
そして、今の職場で「やりたい仕事」は本当にできないのか?
経験を積みスキルを上げれば、叶えられるのではないか?
冷静に点検してみましょう。
そうすることで、今の仕事が「やりたい仕事」に繋がっていると、社員自身に気づきを与えることができるかもしれません。
これは、できれば不満が出る前に、 1on1ミーティングや定期面談などで、キャリア計画について話す機会を設けられると、より離職を防ぐ取り組みとして有効なのではないかと思います。
・選考の段階で仕事内容の良い面だけでなくマイナス面も伝える
・入社前の職場見学や座談会、インターンシップによりギャップを防ぐ
・不満を受け止め「やりたい仕事」を言語化し、できるような道筋を一緒に考える
・できれば不満が出る前に、キャリア計画について話す機会を設ける
最後に
今回は、若手社員の早期離職について、その原因と人事や管理職ができることを考えてきました。
ここまで、いろいろな対策を考えてきましたが、すべての項目に共通して重要なことは、社員同士のコミュニケーションだと思います。
困ったときにすぐに相談できる上司、自信を失った時に話せる同僚、辛くてどうしようもない時に駆け込める人事の存在。
このコミュニケーションという土台がしっかりあれば、若手社員が辞めてしまう前に対策が打てるはずです。
みんな、ひとりで仕事をしているわけではありません。
社員一人一人に向き合い声を掛け合うことで、コミュニケーションは育まれるのではないでしょうか。
人材会社にて6年間、【人材コーディネーター】として勤務。求職者と仕事のマッチングだけでなく、もっと一人一人に合ったキャリアサポートをしたいと考え、【国家資格キャリアコンサルタント】を取得。育休中にオンラインキャリアサポートの副業に挑戦し、パラレルキャリアを実践中。