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“個人と組織が共に成長できる仕組みづくりを作りたい!”人材育成のプロが語る人の育て方の極意とは?

インタビュー

人事の”今”をリアルに取材する『人事のジンジ』インタビューコーナー。
今回は東急建設株式会社の人事部阿部大介さんにご出演いただきました。

「組織の中で社員ひとりひとりが主体性を持ち、モチベーション高く仕事ができる環境を提供したい」という思いを抱きながら、新人研修から、30-40代のミドル層、管理職研修等、多数の研修を行い、人材育成のプロとして活躍されている阿部さんに、どのように人を育てるのか、そのコツをお伺いしました。

【Profile】阿部大介
2007年東急建設株式会社に入社。法人営業、作業所運営管理、大阪支店勤務を経て、2016年5月に人事部へ異動。現在、人事5年目。人材育成を担当。国家資格キャリアコンサルタント。

建設は命にかかわる仕事だからこそ、幅広い経験値と深い人間力があるリーダーを育てることが必要!

ーー最初に、今、阿部さんがご担当されている業務について教えていただけますか?

「はい、人事部の採用育成グループの所属で、社員の育成を担当しており、新入社員から役職者までの研修の企画と運営をしています。今年度、特に注力しているが社員の定期的なキャリアの棚卸しと機会創出です。今年度から、30代と40代のキャリア研修を導入し、ミドル層の研修にも注力しています。この層に研修をしていくことで、今後のキャリア展開や、役職者になってどう働くか、管理職じゃなくても、いかに、モチベーション高く働けるなど考えることができると思います。今後、女性活躍推進やダイバーシティへとつなげるためにも、強化すべき層だと思っています」

ーーありがとうございます。では、阿部さんご自身はどのようなキャリアを歩まれてきたのですか?

「新卒で入社して、最初の2年間は法人営業、その後建設現場で『ヒト・モノ・カネ』の管理業務をしていました。その後、大阪支店(現、関西支店)の建築部で、建築工事に関する支店の予算、売上、利益の管理と、本社とのパイプ役みたいな仕事をしたので、人事の仕事に就くまでに、現場を見れたり、営業の仕事ができたのも大きな経験になったなと感じています。それで本社に戻り、2016年度から人事の育成担当になり5年目ですね」

ーーいろいろご経験されて、今の人事の仕事に就かれたのですね。

「そうなんです、だから、人事から発信をする時も、広域支店や現場を知ってるからこその伝え方ができるかなと思っています」

――確かに、現場を知ってる人から言われると、届き方も違いそうですね。では、先ほど、女性活躍の推進とおっしゃってましたが、建築業界だと女性は少ないような印象ですが、どうなんでしょうか?

「総合職に限れば、女性社員比率は、全体の約10%ですね。管理職の中で女性の方はごく少数です。最近では、定期採用総合職の女性採用比率もも20%弱くらいはあるのですが、その方達が管理職候補層に育つまで、15年くらいは経験が必要なんですよね」

――管理職になるまでに長いキャリアが必要なんですね。

「管理職は45歳以上くらいが中心ですね。特に建設現場は命に係わる作業をしているので、十分な経験則が必要です。技術のほか、適切な法務的な知識、幅広い人間関係の構築などが多分野に渡りますね。ひとつのプロジェクトに関わる人数も多く、クライアント、自治体、近隣住民の方、協力会社の皆様と様々な立場の人がいるので、そこを全部束ねていくには、経験値や人間力が必要なんですよね」

社員一人ひとりのwillやwantを叶えられるようにサポート体制を構築

――では、阿部さんは今は人材育成をメインでお仕事されているとのことでしたが、どのようなところに、やりがいを感じていらっしゃいますか?

「やはり、研修の企画・運営をメインで担当しているので、企画した研修が実施されている時に「あ、今腹落ちしてくれたな」など、感じることが多々あるので、その瞬間はやりがいを感じます。また、研修で気付きを得て、それがきっかけで成長できたという話しを聞けると嬉しいですね」

――人の気づきとか成長とかに立ち会えるのは嬉しいです。では、研修のプログラムも、阿部さんご自身で考えるのでしょうか?

「そうなんです 。ベースはあるものの、やはり時代や各階層に合わせて伝える言葉や伝わる言葉も違いますので。あとやり方も、講義系がいいか、グループワーク中心がいいかなど、都度変化させています」

――そうなんですね、では、社会的には、ミドルキャリア層への対応が不足している会社が多いと思うのですが、御社は研修も強化されているんですね。

「そうですね。今は、会社がキャリアを用意する時代ではなくなりつつある、その入り口に入ったなと感じています。mustではなく、willやwantを重視すべきだなと感じています。単に、会社から言われるだけでなくて、自分が何をやりたいかを実現させていくことが大切ですし、そうすることで、パフォーマンスをより高く発揮して欲しいと思っています」

ーーやはり、人って、mustではなくて、wantやwillから動くことが大切なんですね。

「これを達成するべきだからあなたはこれやるべきだ」ではなくて、“ああなりたい、あれをやりたいから、今はこれをやる”というふうに、自分の意思を反映させないと、モチベーション高く動けないなと思っています

人の未来にフォーカスできるところが人事の魅力

――確かに、wantやwillから動くことは本当に大切ですね。営業、支店と様々なご経験を積んでの人事だと思いますが、阿部さんご自身は人事のお仕事をどう思われていますか?

「そうですね、私は人事の仕事が一番好きですし、続けていきたいなと思います。やはり、人事は「人の未来にフォーカスできる」ところが魅力です。自分の強みとしても、人に寄りそえるところがあると思うので、人をよく見て、「この人はこういうところを頑張りたいんだな」など、社員の一人ひとりのwillやwantを少しでも叶えられるようにサポートしたいと思っています」

――「人の未来にフォーカスできる」なんて、素敵ですね。では、その人事のお仕事で大切にしているマイルール的なものはありますか?

「現在、大切にしていることが三つあります。一つは“相手を尊重すること”。二つめが“可能な限りパワーゲームに持ち込まない”。で、三つ目が、“交差点の真ん中に立つこと”です」

――ありがとうございます。三番目の「交差点の真ん中に立つ」が気になったのですが、どういうことですか?

「感情と法律や社則、組織と個人など、両軸の真ん中に立つということですね。感情に寄りそいすぎてもだめだし、かといって法律や社則がこうだからって押し付けるのもよくない。また、個人にも寄り添うけど、組織も大切にしないといけないというような感じで、バランスをどうとるかということを意識しています。この「交差点の真ん中に立つ」という言葉は尊敬する先輩から教わったのですが、ここ数年で一番響いた言葉ですね」

――素敵ですね。確かに、多様な軸の真ん中に立つのは、すごくバランス感覚が求められますもんね。では、二番目におっしゃっていた「パワーゲームに持ち込まない」というのはどういうことですか?

「やはり、会社という組織は大きいし力があります。だから、個人対組織でいうと、組織が勝ってしまうことが多いんです。だから、まずは、個人の想いや考えを重視して話しを聞く。その個人がどういう正義を持って、主張しているのかをちゃんと聞いて受け止めて、その上でどうするかを考える。いきなり、「会社なんだから」、「ルールなんだから」、とは最初から言わず、きちんと個人を尊重して対応するようにしています」

衣食住の根幹である”社会のライフライン”を扱う人材を育てる仕事は責任感がある仕事

――個人を尊重して対応することの大切さを感じますね。ありがとうございます。では、研修も多くご担当されているということで、こんな人材になって欲しいとか、人材への思いはありますか?

「そうですね、やはり、我々の仕事は衣食住の根幹を支える仕事です。人の生活を支えている。特に東急グループというのもあり、ライフラインを支えている。ビルや住まいなどの「住」の提供や、鉄道やバス、道路、小売り、レジャー、各種サービスなど、人々の生活の基盤になっている仕事なので、そこに誇りをもって仕事をしてもらいたいなと思います。

――確かに、東急グループというと、本当に私たちのライフラインを支えている企業ですもんね。阿部さんもそういうところに魅力を感じてご入社されたんですか?

「実は大学生の時にバルセロナに行ったことがあり、その時に、感じたのがバリアフリーだったり、エレベーターがスムーズにあったりなど、重い荷物、キャリーケースなどを持っていても移動がしやすいことに驚いたんです。日本に帰ってきたら、駅の階段や移動の大変さを感じたりして、日本人は優しくて人が良い民族だって言われるわりには「建物は冷たいな」って感じました。そんなとき、ちょうど東急グループが東急沿線の駅をすべてバリアフリー化するっていうのを打ち出してたのを見て、ここで仕事をしたいと思い、入社しました」

――そうだったんですか、建物も優しく、ライフラインを整えていく仕事に魅力を感じたんですね。では、その人材育成の中で気をつけていることなどはありますか?

社会のライフラインを扱う企業で働く人材を育てるということはとても責任ある仕事だと感じています。なので、人材育成のなかで気をつけているのは、世の中から何が求められているのか、世の中がどう動いているのかなどを意識できる人材であることと、そして、自分から考える、自分から問題を見つけるなどの、問題意識のある人になってもらえるかということです。いろんな関係者や制限がある中で、バランス感覚と、許容性を持てる人材を育成できるように心がけています」

社員一人ひとりの選択肢の幅を広げて会社と個人が相互理解できる関係性を作りたい

――では、今後人事のお仕事でやりたいと思っていることはありますか?

「まず、社員一人ひとりがキャリアの棚卸しをできる仕組みをきちんと運用していきたいです。個人の意思を尊重しながら、会社という組織に何ができるか、研修なども取り入れながら、個人と組織が共に成長できる仕組みづくりをしていきたいですね。あとは、もっと学びの幅や深さ、自由度を広げたいなと思います。人事から見て、「必要な研修なので、これをやります」ではなくて、「自分にはこれが足りないなとか、ここを伸ばしたい、あんなことがしたいなとか、こういう力をつけたい」などのように、社員の皆さんが選択できる、自由度は作りたいなと思っています」

――選択できる自由度ですね?

「そうです。今、人それぞれの目標って、どんどんパーソナル化していると思うんですよね。例えば年収の面でも以前は高ければ高いほどいいという風潮ありましたが、いまは違う。年収はそこまでじゃなくてもいいから家族との時間を欲しいなど、ライフスタイルも様々ですよね。だから、社員それぞれの価値観を尊重して、会社と個人が相互理解を進められるような関係性を築けられたらいいなと思っています」

自分の人生の手綱は自分でひく。この意識を持ち続けることが大事

――では、今は就職や転職なども大変な状況があると思うのですが、人材育成のプロとして何か心がけのアドバイスなどありますか?

「そうですね、三つの視点を持つことですかね。虫の目、鳥の目、魚の目です。まず虫の目で、自分が今すべきことは何なのかをしっかり見定める。次に、鳥の目で全体を俯瞰しながら、今自分がどういう立ち位置にいるのかを客観的に見る。そして魚の目で時代の流れとか世の中の流れから、自分は外れていないかっていうのを察知する。この三つをバランスよく持っていれば、自分がどういう位置にいて、どういう方向性に向かっていて、今何をすべきかみたいなところがわかってくるのではないかなと思います」

――三つの目で見るバランス感覚ですね。

「そうですね、あとは、やはり、自分の人生の手綱は自分で握っているのだから、その手綱は離しちゃダメということですね。私はエルメスのロゴが好きなんです。あのロゴには「エルメスは最高の馬車と従者を用意します。ただその手綱を握るのはあなたです。エルメスの商品を超一流にするのも二流にするのもあなたの使い方次第です」というブランドメッセージが込められているそうです。それに象徴されるように、人生はどういう方向に手綱を握るのか、強弱をつけるのかなどは、自分が決めるというふうにしっかり心に留めることが大切だと思います」

――ありがとうございます。「自分の人生の手綱は自分がひく」ですね。では、最後に、阿部さんが自分らしく生きるために大切にしていることはなんですか?

「そうですね、安心感は大切にしたいです。やはり、「この人だったら」っていうふうに思ってもらえるようになりたいと思っています。キャリアコンサルタントの資格もそのような安心安全の場を提供したいという想いで資格の取得をしました。欲しい言葉をすぐかけてくれたり、気づいてほしい時にすぐ気づいて声をかけてくれる人みたいな、そういう人になりたいです。人それぞれをきちんと見て、自分自身もアップデートしてかないといけないなと思います」

 

撮影/橋本憲和

橋本夏子

【エディター&キャリアコンサルタント】 女性誌5誌16年、女性WEBメディア4年、女性メディア編集者として20年間のキャリア。女性ユーザー1000人以上の取...

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